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レビュー・紹介

「太陽の塔からみんぱくへ」特別展!

投稿日:3月 16, 2018 更新日:

数年前、大阪の民族学博物館で研究プロジェクトの外部研究員をさせていただいたことがある。そのご縁なのか、新しい展示がかかると、初日の前日に行われる「内覧会」の招待状をいただく。しかし、必ずと言っていいほど授業や委員会がある水曜日なのでなかなか行けない。だがどうしても今回いただいた展示「太陽の塔からみんぱくへー70年万博収集資料」は行きたかった。祖父が大阪万博に関わっていた関係で、太陽の塔は子供の頃から親しみ深い。祖父が見たであろう、万博の太陽の塔の地下に展示されていたもの(全2000点以上、収集費用6000万)の一部が今回展示されるのだから、どうしても見たい。人類学者の端くれとして収集に関わられた先達の息吹も感じたい。それに、お世話になっているS先生の名前が実行委員会にある。強行軍だが大阪まで日帰りで出かけた。

その前に少し寄り道。豊中に暮らす祖母と叔父の家で、昼食に豚まん(関西では肉まんと呼ばない、なぜか?)を食べる。祖母は御歳96歳、耳は遠く膝が痛いと言っていたが、いやいやご立派である。体調を崩していた叔父さんもずっと元気に見える。そして予定が合わずに会えないはずの年上の友人にも公園でばったりすれ違う。病院に行く途中とのこと。もう太陽の塔のご利益が発揮されているのかと、ワクワクしながらチョコレート色の阪急電車に乗り込む。この電車だけは色を変えないで欲しいと願う。

大阪モノレールでゆるりと万博中央駅に到着し、紅梅と白梅の林を通りみんぱくまで歩く。太陽の塔は今日も神々しい。子供の頃、みんぱくに連れて行ってと頼むと祖父は渋った。今はその理由がはっきりわかる。子供の足だと下手をすると駅から小一時間以上かかるだろう距離だ。イラチな祖父には大変な負担だっただろう。40年前の自分が歩いたはずの道を歩いていく。

展示会の式典では、収集に関わられていた先生方の背中が来賓席に見える。みなさん後期高齢者のはずだが、体格ががっしりとしている。やはり体で稼いだ初期の人類学者は根性のみならず体も違うのか。全体的に重厚である。多分私は、ああいう仕上がりにはなれないだろう。

いよいよ内観会がはじまる。地域ごとにセレクトされた仮面と彫像を中心にした展示である。もちろん選りすぐりだろうが、状態がいいことに改めて驚き感謝する。そして何よりも楽しかったのが、研究者が順番に、自分が担当した地域のコレクションについてエピソードを話す、いわば「トーク・リレー」だ。普通の展示では学芸員1名が全部を回って説明するのが常なので新鮮だ。きっと収集チームEEMもこんな風に物事をしていたのだろうと思わせる憎い演出である。

この展示会が面白いところは、一粒で何度も味わえることだと思う。展示そのものを、収集のされ方を知ることを、展示を作り上げた今回の実行委員会が収集を総括・実施した当時の人々へ捧げるオマージュを、そして短い時間でかなり力技で収集をしたことへの賛否についても考えさせられる。タイムマシーンがあれば、是非当時の万博の太陽の塔の地下部分を訪れてみたいものである。

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