佐藤峰研究室/Mine’s Lab

養花天

今年度ご卒業されるみなさん、改めてご卒業おめでとうございます。

大したことは出来ませんでしたが、授業・スタジオ・ゼミにご参加いただいたみなさん、本当にありがとうございました。今年は全体の卒業式はなく、学位授与式がそれぞれ、ひっそりと静かに、心を込めて行われました。

朝から花曇の1日でした。晴れたり曇ったり、午後からは雨がパラパラと降っていましたね。

私は最近句会に入っていて、歳時記を持ち歩いています。(渋い趣味かもしれませんが楽しいですよ。)千葉から横浜までの長い通勤時間、歳時記をめくりながら、どんな句を作ろうと想像を巡らせます。大抵妄想で終わりますが。

学位授与式の当日、電車の座席から空を見ながら、こんな天気は季語でどう表されているか調べていました。今頃の天気みたいに、花曇のことを、「春陰(しゅんいん)」というようです。きれいですが、少しものがなしい言葉です。明日から4月ですから、みなさんの今の心境に、もしかしたら、しっくり来る言葉かも。

もう少し調べると、同じ空模様を、「養花天(ようかてん)」と表現することもわかりました。同じように、桜の咲くころの曇り空のことを指します。はな、と言えば日本語では桜を指すことが多いので、桜の花が散らないように養ってくれる、守ってくれるような天気のことかなと語感から思いましたが、少し検索すると、実際の意味はどちらかというと逆のようです:

「養花(ようか)」とは、“花を養う”という意で、春の花のつぼみが膨らむ様子を指しています。春の花が咲くころは曇り空が多く、天気がさまざまに移り変わるもの。花冷えという言葉もあるように、急に冷え込んだりすることもあれば、急に熱くなることもあります。このような天気が花を育てつぼみを膨らませていくことから、曇り空が花を育て養うという様子を指して「養花天(ようかてん)」と言うようになりました。 https://study-z.net/100118600

明日から新生活が始まる人、そうでない人、ワクワクしている人、不安な人、今の心境も状況も人ぞれぞれだと思います。今年度はコロナ禍であったこともあり、辛さが先に立つような人もいつもより多いのかもしれません。

順風満帆に見える人たちも、これから色々な嫌なことや理不尽なことにぶち当たるかもしれません。私もそれなりに長く生きてきましたが、いまだに完璧に穏やかな一日を過ごせることはないです。

心の中が嵐とか、今の状況が真っ暗とか、向かい風が強すぎるとか思う時。そんな時には、学位授与式のはっきりしない空模様を少し思い出して、その養花天の奥深さや懐の深さに思いを巡らせてみてください。そして少し意識してゆっくりした呼吸をするようにしてみてください。一見すると否定的にしか思えない経験や体験がみなさんの可能性や強く生きる力を養ってくれている側面に、少しだけ目を向けてみてください。

それでも理不尽だと思う時には、心身が壊れてしまうと直感が教えてくれる時には、さっさとその場から逃げてくださいね。尊厳や生命を失ってまで留まらなければいけない場所や仕事は、この世に絶対に存在しませんから。

末筆ながら、明日からのみなさんの日々の暮らしが、穏やかで実りが多いものであることを心から願っています。

近くの原っぱのすみれの花。かわいいです。

モバイルバージョンを終了