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出版・発表

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国際開発学会において「特別賞」を受賞しました

この度は、国際開発学会賞選考委員会特別賞をいただき誠に有難うございます。賞状にもあるように、途上にあるこの研究の「将来性」に対して賞をいただいたと理解しております。嬉しいというよりも、きちんと研究をやり遂げなければという気持ちです。研究の達成と積み残し事項については、今度出る学会誌に佐藤寛さんが書評として書いていただいておりますので、そちらをお読みくだされば幸いです。

振り返ると、2007年に柳原透先生(開発経済学)が主催する国際開発学会生活改善研究部会に参加したことがこの本のきっかけになっています。その後研究部会の共同代表を務める中で、生活改善という事例に限定しない形で研究をしたいと二人で話し合いました。この学際研究には、人の心の動いに関わる心理学者の参画が必要だったので方々に声をかけましたが断られ、最終的に佐柳信男先生(教育心理学)が加わって下さいました。その結果、2012年から2015年まで当時のJICA研究所にて、主体性醸成のプロセスと要因にかかる学際的研究」を実施し、「人が自ら意思決定し動いていく」ことをめぐる条件や支援についての学際研究を始め、英語論文の出版を数本しました。

その後、科研費がなかなか取れない中で、3人で共同研究を進め、国内外の学会で企画セッション発表を重ね、その反応が良かったので本としてまとめたいと思うようになりました。2018年に勤務先の横浜国立大学にてPalgrave-Macmillanの編集者にお会いできる機会があり、ダメ元で企画書をお送りしたところ採用していただき、2019年から3年かけて、ちょうどコロナの時期と重なり研究事例を一部変更しつつ書き進め、今年の5月にようやく出版となりました。

学際研究をするということは、好き好んで荒野に向かって歩いていくようなものだと思います。同じ専門領域の研究者であれば、色々なことを前提にできますが、学際研究はその前提からすり合わせていく必要があり、調整コストが極めて高いです。多分、このプロジェクトがなければ、単著が(2冊くらい?)書けたと思います。

それでも、ここまで楽しんでやって来れたのは、常にお二人から知的刺激を受けることが出来たからだと思います。そして三人三様にバラバラの方向を向いているようでも「全ての人がどんな時でも尊厳を持って生きる権利があり、そのことに少しでも貢献したい」という共通の方向性が、見上げると遠くで光るシリウスのようにちゃんとあるということも大きかったです。また、この共同研究の時期と並行して、私の専門領域である開発人類学の本の共著に数冊加えていただき、「アカデミックな癒し」を得られたことも励ましとなりました。

とにかく、ここまでお付き合いいただいたお二人の共著者の先生、最初の研究の機会を与えていただいた旧JICA研究所(特に応援をいただいた加藤宏元所長)、研究部会や発表の場を提供してくれたJASIDという場所、もう天国にいらっしゃる西川潤先生を含めてフィードバックをくださった多くの皆様、研究においてフィールドを提供して下さった皆様に対して、感謝を申し上げたく思います。

最後に、共著者の先生方よりメッセージを頂戴しておりますので、読み上げさせていただきます。

佐柳先生:自分の専門は心理学で,開発領域では「よそ者」だと思っていますが,このような賞をいただけてとても嬉しい驚きです。今後は「よそ者」でなくなっていくよう精進します。心理学の仲間も増やせるよう頑張ります。

柳原先生:学会「特別賞」としてご選定くださり、ありがとうございます。私としては、今世紀20年間での(心理学の視点と知見を組み込んだ)経済学の新展開を踏まえて、Empowerment through Agency Enhancement を論じえたこと、そしてそれを導きとして対人サービス(とりわけソーシャルワーク)の事例分析をなしえたこと、にそれなりの達成感があります。また、Amartya Sen の Agency 論との自分なりのつきあい方がわかったのも、うれしいことでした。ただ、これらは経済学徒としての自己満足に過ぎません。「特別賞」を学際研究への「特別奨励賞」として受けとめ、異業種であり異世代であるお二人との共同研究に貢献できるよう、ひいては学際研究のひとつのあり方を打ち出せるよう、努める所存です。大きな励ましをいただいたことに、あらためてお礼を申し上げます。

今後、本著はドイツ語訳がSpringerから、日本語訳は新曜社より出版していただく予定です。日本語の方は我々が翻訳をしておりますので、その中で今回いただいた課題への対応を少しでもしていきたいと所存です。今後もご鞭撻いただけますようお願いするとともに、改めて賞をいただけたことにお礼を申し上げます。

尊敬する佐藤仁先生より賞状をいただけたのも嬉しかったです

 

 

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