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小確幸のコミュニティデザイン/Community Design for Wellーbeing

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心に風を入れ、余白をつくる

投稿日:3月 31, 2023 更新日:

コロナ禍も徐々に脱してきたこともあり、3月の下旬に大学の卒業式には出ずに(自分の大学の卒業式にも行かなかったくらいなので。ゼミ生のみなさん不義理ですみません。)、10日ほどサンフランシスコ周辺に出張をしてきた。久々の海外、成田空港に着いた時からもうわくわくしている。現地では調査をしつつ(思った以上に進んだ)、知り合いに会いつつ、コロナ渦、お互いがどう過ごしていたかを共有し合う。オンラインでどんなに話せても、リアルに会って話すのはやっぱり全然違う。

空港まで迎えに来てくれた友人G。北カリフォルニアでは今年に入ってから12回も嵐が来たとのことで、倒れている街路樹やほぼ氾濫しそうな川、季節にしては濃い緑を背景にドライブしてくれた。彼女はシリコンバレーから引っ越しをしていた。なんでも、前に借りていた小さな家の近くに、グーグルの代表が暮らしていて、山ごと全部自分の土地にしたくなったらしい(富豪の発想だ)。運悪くその山に彼女の家があり、大家さんから2ヶ月での退出を言い渡されたとこと。コロナ禍なので誰も引っ越さない中、特にSNSをやっていない彼女は、今までゆかりがある人たちにメールで連絡を取った。とにかく友達や知り合いが多い人なのだ。結局、シリコンバレーからもっと南に下ったカーメルという町に近所の人が別荘を持っており、そこを部分的に貸してもらえることになった。大変に美しいその物件はけれども引越し前のものよりも2分の1以下の大きさ。彼女は断捨離のチャンスと引越し先のチャリティショップに新しい家に入らないものを寄付する。その寄付がきっかけでそのショップで働く地元の人たちと仲良くなり、今ではショップでボランティアをするだけでなく、ショップを運営するNPOの理事もしているという。そのことで地元にネットワークが自然にできたとのこと。コロナ禍で100%在宅勤務だったこともあり、 End of Life Doula (終末期の人たちのQOLへのトータルコーディネーター)の資格を取りそれを活かして働いてもいる。相変わらずクリスマスが束でやってきたような明るさだ。彼女を見ていると世界は明るい方向に向かっていける気がする。

数日後サンフランシスコに移動、週末にゴールデンゲートパークの植物園で大学の先輩Fさんと待ち合わせる。彼女はアメリカ暮らしも数十年、現在は市役所で働いているほどにまちを愛している。植物園でボランティアをしていることもあり、隅から隅までをよくご存知だ。Fさんからはコロナ禍に市政や郡の人事などの影響でサンフランシスコはすっかり治安が悪くなり、加えてリモートワークの影響もあり、数万世帯が転出したと聞く。ドラッグストアーを普通の市民が襲ったり(しかし警備の人も怖いので放置したり)、ダウンタウンから主要な会社やショップがなくなったり、経済的な打撃も大きいとのこと。今までは死ぬまでここで暮らすと思っていたけれども、心が揺らいでいるとのこと。かといってずっと暮らしていない日本に退職後戻るのも大変そうだ。晴天に鮮やかな植物たちを見ながらしばし「老後」を意識した話をした。そういう少し重い話をする時、植物は深刻になりすぎないように助けてくれる。確かにまちを歩いていても、以前ほど人々はニコニコ挨拶していないなあと思っていたのだけど、なんだか残念だ。私よりもちょうど一回りほど年上だけれども、いつもと変わらず今をどう生きるかということに真剣だ。

その次の日曜日には大学院での友人Cに日本街で会う。彼は色々な人種のミックスだが(いつ聞いても忘れてしまう。日本人、中国人、アフロアメリカン、チェロキーインディアン・・・。しかし見た目はトルコ人のおじさんだ)、お父さんが軍隊で働いており子供の頃日本にいたことがあり、大きな体からはとても想像できないような可愛い日本語を話す。Cと英語でやり取りをするとなんだかハードな感じなので(詰められている感がある)このギャップが面白い。びっくりするくらいまずいタピオカドリンクを片手に、やたら混んでいる日本町の隅っこで話し込む。彼は一度ホームレスになりシェルター(トイレの壁一面に大便が付けてあったりという状況だったらしい・・・)に入っていたが、数年前に低所得者用のアパートに入居できたという。不景気やらコロナやらでホテルが軒並み潰れたこともあり、市がホテルを転用してアパートにしている。そういう物件に暮らす。コロナ禍ではほとんど家から出ずに、オーガニック納豆と玄米をネットで買い、たまにTrader Joe’s(私も大好きな自然派スーパー、日本進出を切望)に人がいない時間に行き、日本語のテレビを見る、というをしていたらしい。私より朝ドラに詳しかった。それでも特に病んだりしないのは本当に強い。ホームレスに比べたらコロナなんてなんでもなかったと言う。帰り道、日本街からダウンタウンの方向に一緒に歩く。路上にテントを張って住んでいる人の数は明らかに増えている。何か聞き取れないことをぶつぶつ言いながらフラフラ歩いている人とも複数人すれ違う。日曜日の、平日よりもさらに閑散としたダウンタウンを一緒に歩く。別れ際に大きく手を振り続けてくれてちょっとジンとくる。もう70歳近いし、今度会える時まで元気でいてほしい。

そうやって友達に会いながら、今回は大学に許可を取り自費で、次女を帯同していたので調査にも同行してもらう。移動で歩いているときにヌーディストを見たり(これぞサンフランシスコ)、レインボーフラッグがはためく地区から数ブロックで街がメキシコみたいな風景に変わることに驚いたり、社会科の教科書に買いてあることが本当だったことに感動したり(メキシコからの移民の人が建築現場で大きな音でマリアッチを聴きながら仕事をしていた)、14歳の目にも色々な新鮮な風景が飛び込んだようだ。

すっかり心の風通しがよくなった滞在だった。日本にずっと暮らしていてそうでもないと思っていたけど、やっぱり色々と形骸化したり、心身がベタついたりしていたみたいだ。滞在中に、今までやっていたことで実は必要ないこと、付き合いだけでやっていることなどなど書き出して思い切って辞めてみた。割とあった。心に風を入れ、余白を作る。本当にすっきりするものだ。

(まちで一番美味しいと評判、Byliteのアイス。確かに!)

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